ARGフォーラム

本の未来に関するフォーラムと聞いて,行ってきました.既にいろいろな方が感想やまとめを書かれているし,今更ですが,ryojin3も備忘録として書いておきます.

基本情報

開会の挨拶(全体司会:内田麻理香氏(サイエンスコミュニケーター/東京大学工学部))

配信
その他
  • フォーラム内容は書籍化を企画中

基調報告 「ディジタル時代の本・読者・図書館:我々の創造性を高めるために」(国立国会図書館長・長尾真氏)

インターネットの時代
  • 全ての人が情報の受信者・発信者
  • あらゆる情報はネットにある
  • ネット情報は信頼性が課題
電子図書館の現状
  • 背景
    • 出版物のデジタル化:紙の,あるいは元々デジタルな情報
    • ネット化:信頼性のある情報収集が課題
    • 法改正
      • 国会図書館法(2009/07)→NDLは国関係のサイト情報を収集・提供できる
      • 著作権法→NDLは許諾なしに全ての書物のデジタル化ができる
  • 利点
    • ユビキタスな利用→今は公衆送信権の問題で一部×
    • フレキシブルな書籍情報の利用→書誌情報のほぼ自動付与,キーワード自動抽出/自動分類,関連図書リンク等
  • 検索性
    • 検索の粒度(単位)が違う→構造化文書の利点で細かく検索できる(目次,章・節・項,図・表等)
    • 様々な検索アプローチ
これからの電子図書館と出版
  • 技術的に
    • 事実検索が来るか? 解答そのものをドキュメントから抽出して与えちゃう検索.これは知識を再構成するようなもの
    • 書物の解体と再構成(構造化文書のノード毎にユーザにとって必要な部分のみを抽出・再構成)できるようになってくる(きた?)
  • 電子図書館と出版者/社の関係
    • ちょっと取って付けた感じ?
    • JASRACみたいな権利者保護団体を作って図書館→出版者/社,著作者への利用料の分配を行うというアイデア
    • キャッシュフローを強調していた

指定討論・質疑応答(司会:岡本真氏(ACADEMIC RESOURCE GUIDE))

金正勲氏(慶應義塾大学

ポイント3点
  • 電子図書館の形態の分類
  • Google Book Search問題
  • 図書館保証金制度について,韓国事例の紹介
電子図書館の分類軸
  • 主体:民間 or 公共
  • 経営:営利 or 非営利
  • 管理:集中 or 分散
  • アクセス方式:オープン or 閉じている
    • これらの組み合わせで分類できる→いくつか例があったがスライド送り早すぎでメモれず...orz
Google Book Search問題
  • opt-in と opt-out
    • これって何?
    • 文脈から判断すると「ユーザが事前許諾するか否か」という意味で利用しているらしい.一般的なのか?
  • 比較
    • opt-in
      • 電子図書館(事前許諾あり,利用者負担大)
      • 検索費+許諾意向確認費+交渉費→大きい
    • opt-out
      • Google Book Search(事前許諾なし,拒否する場合は申し出,権利者負担大)
      • 監視費+通知費+交渉費→権利者が常にWatchしているような状態
  • 様々な権利処理形態
    • 個別交渉
    • フェアユース
    • 集中管理
    • 電子図書館への特例的免責条項の新設
    • 補償金制度の新設
      • 特定的〜と補償金制度は,許諾の代わりに補償金でまかなうというもの
  • 韓国事例
    • 1996年に電子図書館化開始?
    • 2000年に著作権法改正:図書館ではコピーや伝送が無制限に
    • 2003年に再度著作権法改正:伝送条件に少し制限.新刊本は5年ダメとか.資料の出力も補償金を支払う方向に.館内閲覧数も制限.
図書館補償金制度
  • 権利者許諾の代わりにデジタル利用に対して補償金を支払う制度
  • 1ページ5ウォン,1ファイル20ウォン
  • コピーは無料,出力(印刷って意味か)は補償金支払い
  • 徴収と分配は韓国複製伝送管理センターが行う
提言
  • opt-out方式+補償金制度の導入→デジタル化と権利保護のバランスを保つ,のはどうか

津田大介氏(ジャーナリスト)

津田氏と出版のかかわり
  • 物書きへの道
    • 高校時代(新聞部)に「別冊宝島」の「ライターの事情」で学ぶ?
  • 40歳を超えたライターの道(ご本人は30代)
    • 1)作家,2)専門家,3)編集プロダクション経営,のどれか.
    • 会社も似たようなものかな
  • 編プロから専門家に
    • 編プロをはじめるも,途中仕事が減って,専門家系に移行
      • Napsterに感銘して音楽業界のデジタル化に注目.コンテンツビジネス取材開始
    • 名刺代わりにCCで1冊本を書く
津田氏が感じる出版界の問題
  • 書籍の執筆だけだと収入的にキツイという現状の打破
  • 40歳越えライターを殺さないための方策の検討
  • 若い書き手の確保
音楽と出版の比較
  • 似ている:パッケージ売り
  • 異なる:利益率の違い.出版は紙/印刷代がかかる
これからの本
  • リアルタイムな情報(生の声)の流通には意味があるので,著者は読者をファンクラブ化して課金しても良いのかも
  • 情報の仲介にも意味がある.専門家の知識ネットワークを活用したビジネスを展開してもよいかも
  • 新素材の開発.紙に代わるもの
  • ライフスタイルの提案.iPodの書籍版を考えてみるのもよい

橋本大也氏(IT起業家、ブロガー)

まえおき
  • 書評ブロガーとして,年間300冊完読,200冊書評,計500冊は買うかもらうかする
  • 世界最大の電子図書館はインターネット
  • 書籍のデジタル化は進んでいく
  • 図書館/出版者/著者の役割の再定義が必要?
「教会」としての物理的図書館
  • 逃避先・人生の可能性の実感先・地域コミュニティの場・心の平安・知的雰囲気を味わえる場・・・として「教会的」な図書館は重要
著者の印税が9割になる出版モデル
  • 著作活動で生計を立てられることがコンテンツ立国への近道なのではないか
有益な書評がすぐに見つかる仕組みの構築
  • セマンティックWebの取り組みで実現できるかは未知だが,多読なため,本の選択で間違えたくない.だから有益な書評が欲しい.
  • 面白い本とは,動機付けがあり,未知の内容を含んでおり,難易度・趣味が自分にあっている本.デジタルでここら辺をフォローできると嬉しい
    • 感性の近い友人や先輩の声,って大事かもしれない
著者により多くの感想・反響フィードバックがある世界
  • ブログの仕組みはフィードバックに向いている
  • 著者と読者の共振で面白いコンテンツも作れる
永久アーカイブとしての国立国会図書館
最後に

パネルディスカッション(司会進行:岡本真氏)

フォーラム主旨説明
  • 出版業界に身を置く"若い"世代が出版とデジタルやWebをどう捉えているのか,問題意識の確認と,それに対する何らかの提案ができれば,ということ
長尾氏のコメント
  • 金氏に対して
    • opt-in/out は議論が必要
    • 補償金は国の予算を考えるとちょっと難しいかも.モデルをきちんと考える必要がある
  • 津田氏に対して
    • 同様に流通モデル,コストを意識した出版モデルを考える必要がある
  • 橋本氏に対して
    • 永久アーカイブについてだが,様々な内容があるので全部は難しかった.だから国関係のものだけアーカイブしている.文化保存の観点からも,本当は全部やったほうが良い
登壇者の再コメントや意見
  • 金氏
    • 韓国では9年も前から議論している.タイムラグが問題(要は遅すぎだということか).補償金は利用者がお金を負担するモデルなので問題ない.合意形成に向けてモデルを議論するのもいいが,ある時点で政治的な判断がなされてもよい気がする
  • 津田氏
    • アーカイブにとって権利問題はやっかい.まずは流通することを目的に,一旦権利問題を保留しませんか,ということができれば
    • Google Book Searchについては,Googleだけじゃなく日本の出版界からも同様の動きがないと.いろいろ比較できて「一番条件がいいところと契約します」という形態が健全だ
    • 政策的には情報環境の変化に対する対応力も大事.
    • 業界はコスト削減の視点を考えるべき
  • 橋本氏
    • Google Book Search,あんまり使ってないかも
      • ランダムアクセスに向いてない?
    • 韓国の電子図書館での成果教えて
  • 金氏
    • 地方にいても様々なリソースにアクセスできるようになったこと
著者の印税が9割になる出版モデルについて
  • 橋本氏
    • テーマセントリック(専門特化)→ファンとスターの関係構築→コミュニティに直接売る
  • 津田氏
    • もっとフェア(50:50)で良い
      • 個人はセキュリティ的に穴も多いが,出版社が法対応や事実確認等,機能のエージェント化やマネタイズをするのはどうだろう
  • 金氏
    • 市場原理に基づいた割当なら何対何でもいいのではないか.出版社なしでも本が売れることを証明すればよい.成功すればフォロワーが増える
フロア質疑
  • Q
    • 出版社を使わない流れとして,scribd(文書共有)やiPhone電子書籍等を売る流れがあるが,進むか?
  • A(橋本氏)
    • 現状難しい.発掘されていない出版モデルはあるかも.また,特定のコミュニティ内だとマイクロペイメントはうまくいくかもしれない
  • Q
    • エージェントになりたいが,最初から著者と契約できないので,著者が有名になると大手や他に取られちゃう.どうしましょうか
  • A(津田氏)
    • プロ野球みたいな年間契約はどうか.ゆるい縛りだとうまくいくかも

閉会の挨拶(全体司会:内田麻理香氏)

  • 終了の挨拶等